2007年度石本基金若手研究助成 結果報告

2007年度の石本基金若手研究助成の審査結果は、以下のようになりましたのでご報告いたします。

審査員:岡本賢吾(作業部会長)、金子洋之、出口康夫、戸田山和久

審査結果:全10件の応募のうち、以下の3件を採用、1件を次点とした。

採用者及び研究題目

助成金額:1名につき35万円(期間:2007年4月−2009年3月)

審査経過

 森元氏の研究計画は、進化論の哲学的考察を主題とするが、特に進化論の数理モデルにおいて不可欠に登場する確率概念を主題化し、統計力学や情報理論を踏まえた科学的考察を行いながら概念分析を進めようとしている点、さらにこうした研究が、進化論が実在論的なのか、決定論的なのかという重要な哲学的問題の解明に直結することを見据えている点が高く評価された。

 荒磯氏の研究計画は、構文論上は量化表現であるものが、意味論的には指示の働きを行うと解される現象が自然言語において観察されるという事情に着目し、特に、こうした現象がそのつどの言語使用において生じる一回限りのものではなく、談話の一般的構造に基盤を持つものであることを明らかにしようとする。こうした主題の設定は、独自の着想に基づくものと高く評価された。

 金田氏の研究計画は、真理述語をめぐるパラドックスについての分析という、それ自体はオーソドックスなものであるが、しかし従来まったく対照的なものと見られてきた「意味論的アプローチ」と「文脈鋭敏性アプローチ」の双方を視野におさめ、踏み込んだ比較を行おうとしており、また論理学的なテクニカルな問題についても、確かな素養と興味ある見通しを備えている点が高い評価を得た。

 吉満氏の研究計画は、関連論理の自然な意味論を構築することを目標とし、特に、従来の可能世界意味論等に代わる、より優れた意味論を提示するには、存在論のレベルにまで掘り下げた分析が必要であると指摘する。このアイデアは重要性も高く興味深いと評価されたが、ただし「存在論」と呼ばれるものの内容がいまだ漠然としすぎているのではないか、という疑問も寄せられた。

 以上の通り、採用された3件は、それぞれの分野の現在の研究水準に照らして十分独創的で質の高いものと評価できる。また次点の1件も、その興味深さでは何ら劣らず、今回は次点とするものの、より具体性を増した計画案が再提出されれば、高く評価しうるものと考える。

 選に漏れた6件についてはいずれも、計画内容に十分なまとまりがない、審査員を十分説得できるだけの説明が展開されていない、といった難点が指摘されたことを付言しておく。

若手研究助成作業部会長 岡本賢吾

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