2008年度石本基金若手研究助成 結果報告

2008年度の石本基金若手研究助成の審査結果は、以下のようになりましたのでご報告いたします。

審査員:岡本賢吾(作業部会長)、金子洋之、出口康夫、戸田山和久

審査結果:全4件の応募のうち、以下の3件を採用、1件を次点とした。

採用者及び研究題目

助成金額:1名につき35万円(期間:2008年4月1日−2010年3月31日)

審査経過

 吉満氏の研究計画は昨年と同様、関連論理の自然な意味論を与えることを目的とするものであるが、今回は特に可能世界意味論に代えて「動的意味論」の立場をとるということが前面に打ち出され、弱い関連論理の意味論から始め、そこでのモデルの制約を除々に強めることで自然な形で強い体系へと拡張していくことを提案しているなど、計画の具体性が大きく進捗していることが高く評価された。

 小山氏の研究計画は、D.Lewis以来の様相実在論を批判しながら「メタ存在論」の観点から独自の様相の形而上学を確立することを目的としている。従来の「様相実在論 vs 現実主義」という不毛な二分法を乗り越えることを目指し、とりわけ可能世界の「還元先」として構文論的な論理的帰結の概念に訴えるという Siderらの提案を一層具体性のある形に発展させようとしている姿勢が高く評価された。

 櫻木氏の研究計画は、記憶によって保持されている命題的な知識の正当性をどう説明するかという問題に取り組むものであり、まずこの問題のユニークさと、この問題についてのすでに数年間にわたる申請者の熱心な研究の蓄積が評価された。さらにその際、申請者が基礎に据える外在主義的なMemory Trace理論は認識論全般に拡張する見込みを持つ重要なものであること、記憶された知識の正当化の問題は合理性との関連という大きな射程を持つことも、審査員の共感を得た。

 佐藤氏の研究計画は、ウィトゲンシュタインのアスペクト論の解釈を中心としながら、より広範に行為、他者、学習といった一般的な概念の解明を目的とするものである。アスペクト論はすでに多くの解釈者に取り上げられながらも十分な展開をとげてきたとは言えず、新たな観点や理論を導入することがぜひとも要求されると考えられるが、この点から見たとき今回の案は、十分な見通しがあるとは考えにくいという批判が寄せられた。しかし他方で、立方体の知覚の例をはじめイヌイットの雪概念などに言及しながら、自分自身の言葉でアスペクト論の重要性と射程を詳しく熱意を持って説明している点では、さらに磨きをかければ充実した計画案に発展することが期待できると評価された。

 以上の通り、採用された3件は、それぞれの分野の現在の研究水準に照らして十分独創的で質の高いものと評価できる。また残りの1点も次点としての評価には十分値すると考えられる。

若手研究助成審査委員長 岡本賢吾

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