2010年度石本基金若手研究助成 結果報告

2010年度の「石本基金 若手研究助成」審査結果は、以下のようになりましたのでご報告いたします。

審査員:金子洋之(作業部会長) 出口康夫 加地大介 関口浩喜

審査結果:全9件の応募のうち、以下の3件を採用とした。

採用者及び研究題目

助成金額:1名につき35万円(期間:2010年4月−2012年3月)

審査経過

 今回応募者は全体で9名であった。各応募者の研究計画を審査委員に回し、審査委員ごとの評価を出した上で、全体の総合評価を行うという従来の方式を踏襲して審査を行った。今回はどの研究計画案も比較的よく書かれており、甲乙をつけるのが難しい点もあった。そのため、過去三年の評価に比べて審査員ごとの評価が大きく割れたところもあったが、最終的には、各審査員の評価の平均点をとって、総合順位をつけ、それに基づいて、当初、上位三人を採用、四位の一人を次点とするという決定を行った。その後、上位三名のうちの一人、秋吉亮太氏より辞退の連絡があったため、規程に基づき、上記の三名を採用するということに決定した。なお、今回の計画案の中には過度に冗長なものも見うけられた。今後の応募にあたっては、記入要領には、「冗長になりすぎないように」という指示があったことを再確認してもらいたい。以下、今回採用の三名の研究計画について簡単に触れておく。

 村井氏の研究計画は、知覚の哲学における概念説を、マクダウェルに代表されるような命題モデル型の概念説から非命題モデル型の概念説へと転換することを試みるものである。その際、カントの知覚論からアイデアを借りるとともに、カントの知覚論そのものを新たな概念説として再評価しようということも意図されている。この計画案に対しては、カントそのものへのアプローチが十分か否か、また描写モデル説の内実が十分明確でない、といった批判もあったが、その一方で、全体として問題設定の明確さ、準備状況の確かさ等が高く評価された。

 小草氏の計画案は、視覚経験・色経験における現象的要素と志向的側面との関係を探るとともに、色の形而上学的身分を明らかにしようとするものである。また、その研究を進めるにあたっては、「経験の透明性」の議論が適用される文脈そのものを問い直すことから始めるとされており、その議論が及ぶ範囲の詳細な検討がなされている。これについては特に、過去の研究の中から新たな問題を引き出そうとする姿勢とともに、すぐれた準備状況等が高く評価された。

 笠木氏の計画は、認識論における文脈主義を、「参照クラス」と呼ばれるものを加えることによって刷新するとともに、それによっていくつかの認識論的問題の解明を目指すというものである。計画の具体的手順が明確に示されており、また準備状況・これまでの自分の成果との関連づけもはっきりと示されており、すぐれた研究計画だとの判断がなされた。

「若手研究助成」作業部会長 金子洋之

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