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ニューズレターNo.4

クワイン教授とのワークショップに参加して(飯田 隆)

 1996年11月12日に、国立京都国際会館において、財団法人稲盛財団の主催、本学会ならびに科学基礎論学会の協賛で、クワイン教授を迎えてのワークショップ「言語・ホーリズム・自然主義」が催されました。そのワークショップに参加したひとりとして、そのときの模様や感想などについて述べたいと思います。

 このワークショップは、クワイン教授が第12回京都賞を受賞されたことを記念して開催されたもので、ワークショップの前日には、クワイン教授の記念講演がありました。私はちょうどこの記念講演の始まる直前に会場の京都国際会館に着きましたが、まず聴衆の数の多さにいささかびっくりしました。他の二人の京都賞受賞者(先端科学技術部門のクヌース教授、ならびに、基礎科学部門のカペツキ教授)の講演の後で、このあと引き上げて行くひともいるのかなと思って見ていましたが、そうしたひとはほとんどいないようでした。あまりにもひとが多いので、会場で知り合いを見つけるのにちょっと苦労したほどです。

 「思想の明晰な簡素化」と題されたクワイン教授の講演は、だいたい一時間程度の長さだったと記憶していますが、たいへん印象深かったのは、クワイン教授が、自身の業績のなかで、論理学における仕事に最大の意義を認めているようにみえたことでした。また、表現の「使用 use」と「言及 mention」というきわめて基礎的な区別にわざわざ触れていたことは、意外でした。でも、考えてみれば、クワイン教授ほど、この一見トリビアルと思える区別を怠ったために生じた多くの擬似問題の擬似性を強調した哲学者はいなかったわけですし、この区別が、論理学の哲学のみならず、クワインの哲学の基本的なモチーフのひとつであることを再認識できた気がしました。翌日、午後からのワークショップの前に、ワークショップの参加者とクワイン教授との昼食会があり、クワイン教授と親しく言葉を交わす機会がありました。1908年生まれですから、88才という高齢のはずですが、この折りのクワイン教授はとてもお元気で、さまざまな質問にてきぱきと答えておられました。なかでも耳に残っているのは、「経験主義のふたつのドグマ」の「極端な」全体論はずっと前から取っていないということ、それにもかかわらず、この極端な全体論がしばしば取り上げられるのは、そこに何かロマンチックな ― こうした表現ではなかったかもしれませんが ― においをひとがかぎつけるからではないかという言葉でした。

 さて、ワークショップそのものですが、ここでも聴衆の多いことにおどろきました。残念ながら、本学会の大会でのワークショップの数倍の聴衆でした。しかし、負け惜しみを言うわけではありませんが、ワークショップはむしろ人数が多くない方がよいという感じは、このワークショップのあいだ中ついてまわりました。結局のところ、クワイン教授の仕事のさまざまなテーマをめぐる四人の発表と、その場でのクワイン教授からの簡単なコメントがあっただけで、時間の問題もあったのでしょうが、聴衆からの質問もごくわずかなものにとどまりました。クワイン教授の基調講演の前に、吉田夏彦氏(立正大学)からの挨拶と、大出晃氏(創価大学)によるクワイン教授の紹介がありました。吉田氏は、クワイン教授が先に日本を訪れて連続講演をなさったときのことについて話され、わが国の科学哲学界においてもクワイン教授の果たした役割が大きかったことを改めて思い出す機会を与えてくれました。ワークショップでのクワイン教授の基調講演は、「本能・物化・外延性」と題されており、きわめて広範な主題にわたって簡潔に触れて行くというスタイルのものでした。ごく短い時間のなかで、クワイン教授の哲学の基本的モチーフが次々と現れてくるのには、疲れましたが、私にはなかなか感銘深いものでした。その後、いずれも本学会の会員でもある四人の発表がありました。その各々について簡単に内容を紹介したいと思います。(せっかくこのようなワークショップをやるのならば、小冊子で済むのですから、その記録ぐらい残しておいたらよいと思うのですが、残念ながら、主催者側にはそのような考えはなかったようです。いずれ、この日の発表は何らかの形で活字になることを希望します。)

 話した順番では、私が最初で、「数と個体化」というタイトルをつけましたが、これは実際には、クワイン教授がその論文「存在論的相対性」のなかで、指示の不可測性(inscrutability of reference)が現実の翻訳に際しても生じる例として取り上げている、日本語の助数詞 ― 「一本」、「二匹」、「三頭」などに現れる表現 ― の例を再検討したものです。(最近のクワイン教授の著作では、「指示の不可測性」ではなく「指示の不確定性(indeterminacy of reference)」と言われています。この用語の変化がなぜなのかをたずねるつもりだったのですが、残念ながら聞きそびれてしまいました。)日本語にも、個体化を行う名詞とそうではない名詞とを区別するいくつかの文法的特徴があり、したがって、日本語の助数詞の例は指示の不確定性の実例を提供しないというのが、私の論点でした。

 次に話された丹治信春氏(東京都立大学)の「観察文の理論負荷性」では、クワイン教授のホーリズムが、観察文を特別扱いしている点で不徹底である点が指摘され、観察文にまでホーリズムを適用したとしても、われわれの信念体系において観察文が果たすべき重要な役割が損なわれることはないと論じました。これは、丹治氏の近著『言語と認識のダイナミズム』の延長線上での議論で、なかなか興味深い論点を多々含んでいると感じました。浜野研三氏(名古屋工業大学)の「自然主義と規範」は、クワイン哲学について注目すべき研究を積み重ねられている氏らしく、クワイン教授の論点への深い理解に裏付けられた議論でした。クワイン教授の「自然化された認識論」の構想が取り上げられ、それが認識論のもつべき規範性に欠けるという批判とそれに対するクワイン教授の応答とが詳細に検討されました。そのうえで、浜野氏は、規範性の要素を取り込みうる自然化された認識論の別ヴァージョンを提出されました。

 最後に話された冨田恭彦氏(京都大学)は、過去におけるクワイン教授との対話をここでも続行するという形で、クワイン教授の哲学を近世以来の哲学の歴史という広いバックグラウンドのなかで位置づけるという興味深い試みを披露してくれました。クワイン教授の自然主義が、近代西洋哲学の伝統から乖離するものではなく、たとえばロックに代表されるような近代の哲学の基礎にある自然主義的傾向に合致するというテーゼは、なかなか刺激的であったと思います。

 この四人の発表がそれぞれ終わるごとに、コメントを求められたクワイン教授からの簡単な応答がありましたが、いくらか奇妙な感じが残りました。これがなぜであったかは後になってわかったのですが、それについては後述します。いずれにせよ、私のものはともかく他の三人の発表はどれも密度の濃いもので、私たちでさえ疲れたのですから、クワイン教授の疲労ぶりはたいへんなものだったろうと推測します。ワークショップが終わってホテルに戻られるクワイン教授はすっかり疲れたご様子でした。さて、この日のワークショップそのものでのクワイン教授の応答がいささか生彩を欠いているかのようにみえたのがなぜなのかは、しばらくたってからわかりました。ワークショップが終わってほぼ一週間ほど経ってから、私の勤務先の大学の郵便受けにクワイン教授からの手紙が届いていました。それによると、ワークショップの際に、私の発表を同時通訳を通して聞いたのだが、そのときにはほとんど理解できなかった、その後になってから、その日にもらった原稿を読んでみてはじめていろいろなことがわかった、日本語の例が使えないというのはその通りだと思う、云々、といった内容で、この手紙は近いうちにまとめる予定の自分の最近の論文集にもいれるつもりだから、その前に私が自分の話を論文として発表するのならば、その際にこの手紙からいくらでも引用してよいと付け加えてありました。この手紙には感激しましたが、同時に、なるほどとも思いました。

 同時通訳が用意され、聴衆はほとんど日本人なのだから、英語の原文を作ってそれを同時通訳に渡し、自分は日本語の原稿を読もうと私は考え、他の発表者のうちのふたりもそのように考えたようでした。いちおう周到な準備はしたつもりだったのですが、思ったほどはうまくいかなかったようです。やはり、言葉が異なる場合には、コミュニケーションはきわめてむずかしいものだと改めて思いました。

 しかしながら、全体としてはたいへん有意義なワークショップであったと感じます。このワークショップを組織され、当日の全体司会をも勤められた小林道夫氏(大阪市立大学)および野家啓一氏(東北大学)の労をねぎらいたいと思います。ことに小林道夫氏は、あいにくと体調の悪いなか、しかも、その後すぐにフランスに出かけるという忙しいなかで、いかにも大変そうでした。ご苦労さまでした。

会務報告

1996年5月11日 編集委員会
 議題:1.『科学哲学』29公募論文審査者の決定

1996年6月15日 大会実行委員会
 議題:1.第29回大会プログラムについて

1996年6月15日 編集委員会
 議題:1.『科学哲学』29掲載論文について

1996年8月31日 大会実行委員会
 議題:1.第29回大会プログラムの決定

1996年11月16日
 理事会・評議員会・大会実行委員会
 議題:1.会務報告の説明
    2.会計報告の説明
    3.第30回大会開催地について

1996年11月17日
 理事会・編集委員会・大会実行委員会
 議題: 1.『科学哲学』30編集委員長の決定
    2.第30回大会実行委員長の決定
    3. ニューズレター編集責任者の交代
    4.事務局移転について

1996年12月14日 編集委員会
 議題:1.『科学哲学』30編集方針について

1996年12月14日 理事会
 議題:1.『科学哲学』30編集委員の決定
    2.第30回大会実行委員の決定
    3.日本学術会議第17期<関連研究連絡委員会に係わる推薦人>
      及び<学術会議会員候補者>の決定
    4.事務局移転について

1997年3月22日 大会実行委員会
 議題:1.第30回大会について

役員一覧

会  長

坂本百大

理  事

飯田 隆

石黒ひで

内井惣七

奥 雅博

神野慧一郎

黒崎 宏

小林道夫

坂本百大

沢田允茂

瀬在良男

竹尾治一郎

丹治信春

西脇与作

野家啓一

野本和幸

服部裕幸

藤村龍雄

 藤本隆志

 

 

監  事

高松鶴吉

渡辺 博

   
   

評 議 員

碧海純一

飯田 隆

石黒ひで

石本 新

伊藤邦武

内井惣七

内田種臣

大出 晁

奥 雅博

神野慧一郎

川野 洋

黒崎 宏

小林道夫

坂本百大

沢田允茂

瀬在良男

高松鶴吉

竹尾治一郎

丹治信春

土屋 俊

永井成男

西山佑司

西脇与作

野家啓一

信原幸弘

野本和幸

野矢茂樹

服部裕幸

藤川吉美

藤田晋吾

藤村龍雄

藤本隆志

美濃 正

村上陽一郎

村田純一

山田友幸

横山輝雄

吉田夏彦

渡辺 博

藁谷敏晴

大会実行委員

委員長:土屋 俊

我孫子信

飯田 隆

飯田亘之

伊藤邦武

内井惣七

岡田光弘

奥 雅博

小川 囘

金子洋之

神野慧一郎

鬼界彰夫

小林道夫

坂本百大

柴田正良

瀬在良男

田村 均

丹治信春

中釜浩一

西脇与作

野家啓一

野本和幸

信原幸弘

野矢茂樹

服部裕幸

藤村龍雄

藤本隆志

古田智久

武笠行雄

山田友幸

渡辺 博

藁谷敏晴

編 集 委 員

委員長:丹治信春

飯田 隆

飯田亘之

石垣寿郎

石黒ひで

伊藤邦武

内井惣七

大出 晁

岡田光弘

大庭 健

奥 雅博

神野慧一郎

鬼界彰夫

黒崎 宏

小林道夫

坂本百大

瀬在良男

竹尾治一郎

田中 裕

土屋 俊

永井 均

西脇与作

野家啓一

信原幸弘

野本和幸

野矢茂樹

服部裕幸

藤田晋吾

藤村龍雄

藤本隆志

山田友幸

横山輝雄

吉田夏彦

渡辺 博

藁谷敏晴

大会報告

こちらをご参照ください。

国際会議報告

(1)アリストテレス協会・マインド協会合同学会(96.7.5-8.)
(2)ウカシェーヴィチ死後40周年記念学会(96.7.7-10.)

加地大介

 英国最大の哲学学会である上記学会(1)が昨年はダブリンで開かれた(バークリーの死後200周年に当たった1953年以来のことだそうである)ため、晩年をダブリンで過ごしたウカシェーヴィチにちなんだ学会(2)が併せて開かれた。筆者はいずれにも参加し、後者で発表を行ってきた。

(1)アリストテレス協会・マインド協会合同学会('96.7.5-8.)

 学会(1)ではパトナムが招かれており、ウィトゲンシュタインの数学の哲学についての発表を行った。ウィトゲンシュタインが数学に関して「常識的実在論者(commonsense realist)」であったという主旨のものだったが、実質的には静寂主義(quietism)へのパトナム自身の転向を表明するような内容の発表で、またか、とか、とうとうそこまで、と皆あきれまじりに驚いていた。

私が最も強烈な印象を受けたのは、P.ファン・インヴァーゲンの発表「なぜそもそも何かが存在するのか?(Why Is There Anything At All?)」を中心に行われたセッションであった。コンファレンス・ディナーの後二百数十名が一堂に会し、夜8時から2時間以上にもわたり「ザ・形而上学」ともいうべき上のようなテーマを巡って白熱した議論が繰り広げられた(ちなみに学会の開始は朝9時)。私はワインでほろ酔い加減であるうえに時差ボケも加わって睡魔と戦うのに必死だったが、ほとんどの参加者はそのような気配も見せず意気軒昂であった。私は彼らの体力に驚くと同時に、形而上学的思考を育む伝統や土壌のようなものを強く感じさせられた。

(2)ウカシェーヴィチ死後40周年記念学会('96.7.7-10.)(於ダブリン)

学会(2)の主な招待講演者は、P.ギーチ、J.ウォレンスキー、G.プリースト、P.サイモンズなどであった。ギーチはレスニェフスキーの定義論を批判する内容の発表を行い、それに対して俊英サイモンズが反対意見を述べていたが、まだまだ青いね、といった感じでそっけなく彼の攻撃を退けていたのが印象的だった。

私はウカシェーヴィチの三値論理(を少し修正した体系)の様相論理としての意義を強調する主旨の発表を行った。英会話能力の乏しい私(もちろん英語発表は初めて)にとって、質問時間の10分をいかに乗り切るかが今回の最大の課題であったが、3人から質問があった。うち一人の質問はハナから全く理解できず内心困惑していたが、どうもその責は質問者当人にあったようだ。そのため、そんな人間を指名してしまったことに責任を感じた司会者が私に代わって答えて(というより受け流して)くれるという僥倖に恵まれ、少なくとも表面上は大過なく終えることができた。

また、高松鶴吉氏が訳されたウカシェーヴィチの『数理論理学原論』を持参し、ポーランドからの参加者の一人に見せたところ、たちまちその噂が広まり、翌日私は人気者になっていた。その原本である第1版は本国でも入手しにくいそうで、そんな本が極東の地日本で翻訳されていることに彼らは相当驚いたようである。

なお、今回は国際交流基金からの助成を得て参加した。この基金の募集要項に記されている選考基準はたじろぐほど高邁なのだが、実際には、発表さえ行えば少なくとも初回はかなりの確率で採用してくれるようなので、積極的に応募されることをお勧めする。

<余談>せっかくアイルランドへ来たのだからと、ウィトゲンシュタインが一時期滞在したロスロのコテッジを訪問した(パトナムも学会後に訪問すると言っていたそうだが、実際に行ったかどうかは定かでない)。20年ほど前にそこを訪れたという黒崎宏氏から頂いた情報をもとに当地で何とか調べをつけ、ゴルウェーからレンタカーで数時間かけて行ったのだが、車が普通に通る道を離れてから、危険表示の看板が立ち羊がトコトコ歩いているような細いでこぼこ道を30分程度(だったようなのだが、運転中はその倍ほどにも感じた)進んでいった後に、ようやく到達した。今ではそこは建て替えられてユースホステルになっており、ウィトゲンシュタインの滞在を記したプレートが表に張ってあった。そこで一泊した後に、こんな場所にまでたどり着いたウィトゲンシュタインの不思議なーMと、こんな場所を全く独力で探し当てられた黒崎氏の執念?に敬服しつつ帰路についた。


(1)第5回日米現象学会(5th Japanese/American Phenomenology Conference 1996)
(2)第3回国際生命倫理学会(III World Congress of Bioethics)

藤本隆志

(1)第5回日米現象学会(5th Japanese/American Phenomenology Conference 1996)

昨1996年9月18日から21日までの4日間、仙台の東北大学で開催。主題とされたのは「間文化的コミュニケイションの可能性(Possibility of Cross-Cultural Commu-nication)」で、今回はフッサールやメルロ=ポンティと並んで、西田幾多郎、和辻哲郎、三木清など日本人哲学者の思想の受容や理解に関する講演が目立った。外国人参加者は Algis Mickunas(オハイオ大)、Ronald Bruzina(ケンタッキー大)、James Mensch(フランシス・ザヴィエル大、カナダ)、Harry Reeder(テキサス大)、Simon Glynn(フロリダ・アトランティク大)、Debabarata Sinha(ブロック大)、Fred Dallmayr(ノートルダム大)、Thomas Flynn(エモリー大)、Alfonso Lingis(ペンシルヴァニア大)など、米加を代表する現象学者20名。日本人参加者は児島洋氏を組織委員長として日本現象学会の会員がほとんどであったが、本学会からも野家啓一会員(東北大)が会場担当の組織委員として、また藤本隆志会員(千葉大)が1セッションの司会者として参加した。終始友好的な雰囲気に満ちた盛会であった。

(2)第3回国際生命倫理学会(III World Congress of Bioethics)

1996年11月20日から25日までの間に、・米国生命倫理学会年次総会(20〜22日)、・合衆国生命倫理諮問委員会国際サミット会議(21日)、・第3回生命倫理世界会議(22〜24日)、・第1回生命倫理に対するフェミニスト的アプローチに関する国際会議(24〜25日)、・ヒト・ゲノムの多様性研究集会(25日)、・人権と健康医療に関する生命倫理の地球化問題検討会議(25日)、・死の定義に関する第2回国際視点検討会(25日)がサンフランシスコ市中心街にあるクラウン・プラザ・ホテル4階の大半を借り切って開催された。何十というセッションに分かれ、その数倍の研究報告が行われたから、全体の組織委員長たるAlexander Capron教授(Pacific Center for Health Policy and Ethics)や国際生命倫理学会会長のDaniel Wikler教授(University of Wisconsin)ですら、その全容を把握しきれなかったのではないか。ロシアを含むヨーロッパ各国やオセアニア諸国からの代表参加、若い世代の台頭と発言力の増大が目立ったように思う。日本科学哲学会からは坂本百大会長が東アジア生命倫理学会の会長として、また藤本隆志会員がその総務理事として20日から24日までの5日間にわたってサミット会議と世界会議に参加し、23日午後には Peter Singer の司会する「東アジアの生命倫理(Major Session G)」で招待講演を行った。また、次回1998年の第4回世界会議を日本で行うことが24日午後の生命倫理世界会議閉会式で決議・採択された(下記の国際会議予告欄を参照されたい)。

寄贈図書紹介

  • 金子邦彦・津田一郎著『複雑系のカオス的シナリオ』(複雑系双書1) 朝倉書店
  • 神野慧一郎著 『モラル・サイエンスの形成― ヒューム哲学の基本構造 ― 』 名古屋大学出版会
  • アドルフ・グリュンバウム著 (村田純一・伊藤笏康・貫成人・松本展明訳『精神分析の基礎 科学哲学からの批判』 産業図書
  • 『一般教育学会誌』 第18巻第1号 (1996年5月) 一般教育学会
  • 『一般教育学会誌』 第18巻第2号(1996年11月) 一般教育学会
  • デズモンド・リー編(山田友幸・千葉恵訳)『ウィトゲンシュタインの講義Tケンブリッジ 1930-1932年』 勁草書房
  • 不二一元著 『衣食住人間学』 文芸社

学会・研究会予告

日本科学哲学会第30回大会
 【期日】 1997年11月15日・16日
 【場所】 千葉大学

日本哲学会第56回大会
 【期日】 1997年5月24日・25日
 【場所】 東京都立大学

科学基礎論学会講演会
 【期日】 1997年6月7日・8日
 【場所】 北海道大学

日本認知科学会第14回大会
 【期日】 1997年6月18-20日
 【場所】 日本電信電話会社株式会社(NTT)基礎研究所
     (〒243-01 神奈川県厚木市森の里若宮3-1)
      詳細についてはWWWの、http://www.brl.ntt.co.jp/jcss97/
      をご覧ください。

日本記号学会1997年度学術大会
 【期日】 1997年5月17日・18日
 【場所】 東京大学教養学部13号館
     (〒153 東京都目黒区駒場3-8-1 Tel 03-5454-6238
        FAX 03-5454-4329 )
 【詳細については】
  WWWの、http://www.tara.tsukuba.ac.jp/semiotic/
  をご覧ください。

日本生命倫理学会第9回年次大会
 【期日】 1997年11月1日・2日
 【場所】 筑波大学
      (つくば市筑波大学生物科学系 メイサー、ダリル)
 【詳細については】
   WWWの、http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~macer/JAB9.html
   をご覧ください。

ユネスコ生命倫理アジア会議(UNESCO Asia Bioethics Conference)兼第2回東アジア生命倫理学会大会(2nd Congress of the East Asian Association for Bioethics)兼第6回福井生命倫理学国際会議(6th International Bioethics Seminar in Fukui)
1997年11月4日(火)から11月8日(土)まで、神戸と福井で上記三つの国際会議が合同開催され、世界中の生命倫理学者が参集します。詳細は、ユネスコのGeorge B.Kutukdjian (7, place de Fontenoy, 75352 Paris 07 SP, France)または坂本百大会長にお問い合わせください。

第四回国際生命倫理学会(IVth World Con-gress of Bioethics)
来年1998年の10月もしくは11月に、日本大学本部(東京都千代田区九段南4- 8-24)で開催の予定です。詳細は坂本百大会長にお問い合わせください。大規模な国際会議になると思われますので、関心ある日本人関係者のご協力が不可欠です。

4th Workshop on Logic, Language, In-formation and Computation (WoLLIC'97)
 Date: 4-6 July, 1997
 Location: Fortaleza (CearaU), Brazil

IVth Congress of International Associa-tion for Semiotic Studies
 Dates: 13 - 18 July, 1997
 Location: Guadalajara, Mexico
関心ある方は、International Association for Semiotic Studies の Dr. Jeff Bernard, IASS-AIS (Secr. General), Waltergasse 5/1/12, A-1040 Vienna, Austria または本学会の坂本百大会長にお問い合わせください。

20th International Wittgenstein Sym-posium
 Dates: 10 - 16 August, 1997
 Location: Kirchberg, Lower Austria
 General Topic: The Role of Pragmatics in Contemporary Philosophy. For further information: see http://www.sbg.ac.at/phs/docs/ wittgenstein97.html

5th Kurt Goel Colloquium (KGC '97)
 Date: 25-29 August, 1997
 Location: Vienna, Austria

Internationaler Kongress der Gesellschaft fur Analytische Philosophie e.V.
 Date: 15-18 September, 1997
 Location: Munchen, Germany

2nd Congress of the East Asian Semiotic Seminar
 Dates: 19 - 25 October, 1997
 Location: 華東師範大学(East China Normal University)、上海。
 詳細は、坂本百大会長または藤本隆志会員にお問い合わせください。

Twentieth World Congress of Philosophy: Paideia, Philosophy Educating Humanity.
 Date: 10-16 August, 1998
 Location: Boston, Massachusetts

『科学哲学』バックナンバー在庫一覧

こちらをご参照ください。

編集後記

 今回から、このニューズレターの編集を担当することになりました。実際の作業に取り掛かるのが遅れてしまい、自分で原稿を書く始末になってしまいました。それでも、間際になっての依頼に快くこたえて頂いた寄稿者の方がいなければ、全部ひとりで書かなければならないところでした。次回は、早めにニューズレターの原稿を広く募集して、もっと充実したものにしたいと思っています。

 話は変わりますが、学会・研究会予告の材料を探すために、インターネットのWWWの哲学関係のページを覗いてみましたが、たいていの情報がここで手に入るという事実に改めて感心しました。哲学関係の充実したリンクページもたくさんあります。会員のみなさまのなかにはもう日常的にここから情報収集をなさっている方も多いかと思いますが、まだの方にはぜひ一度お試しになることをおすすめします。

(飯田 隆)


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